「……それにしても、これどうやって治したんだろう?」

 すり傷を負ったはずの肘を洗いながら思い出す。
 確かに傷になっていたし、痛みもあった。
 なのに今は傷なんて全くなくて痛みもない。
 弦さんが手を当ててくれたら治ったけれど……普通それだけじゃあ治らないよね?
 しばらく眉間にしわを寄せて唸ってみたけれど、どうやって治したかなんてわかるわけがない。
 私はあきらめて百合柄の浴衣に袖を通した。
 ちゃんと右前で襟を合わせようとしてふと気づく。

「あれ? このアザ、濃くなってる?」

 鏡でちゃんと確認してみると、鎖骨の下辺りに生まれつきあるアザが、今までよりも赤く濃くなっていた。

「おばあちゃんもお母さんも、年と共に薄くなるって言ってたのにー」

 五百円玉より少し大きいくらいの丸い形のアザ。同じ場所にアザがあったというお母さんとおばあちゃんは、成人した頃から少しずつ薄くなっていったと言っていた。
 少なくとも濃くなった、なんて話は聞いてない。

「隠せるような服選ばなきゃないじゃない~」

 不満を口にしながら、濃くなったせいで何かの家紋みたいな形になったアザを隠すように襟を合わせて浴衣を着た。