「いつか、自分で物語を書いてみたいの。」
少女は目を輝かせて言う。

「才能はほんの一握りの人間にしかない。そんな叶いもしない夢なんて、早く捨てた方がいい。」
少年はそんな彼女の夢を容赦無く切る。

「そんなの。やってみなきゃ分からないでしょ。
…もし、私が有名な小説家になったら、貴方の前に現れて、ここで1番贅沢なフグのお刺身をご馳走してあげる。」

「僕に毒でも盛るつもりか?」
少年はフッと鼻で笑う。
「丁度良い。僕も君みたいな魔女に殺されるんだったら本望だ。その時を楽しみにしてる。」

少女は少年を睨みつけ、
「じゃあ、その時まで死なないで待っていてね。」
と伝える。

側から見たらなんて物騒な会話だろう。
だけどこの時の2人にとって、それはとても真剣で嘘偽り無い本心だった。
その時また、死にたいのなら、私が…。