「またあとでね、空」


「うん、またあとで、莉央」



莉央は嬉しそうに頷くと、スキップをしながら行ってしまった。


誰かを呼び捨てで呼ぶのも、家族以外の人に名前で呼ばれるのも莉央が初めてだ。


なんだか照れ臭くて、だけど嬉しかった。



「…っ」



ふと、裏から何かが壁にぶつかる音が聞こえてきた。


もしやとなんとなく犯人がわかるような気がして裏に回ると、思った通りの人物がぶつけたのかひじを押さえながら悶えていた。



「…大丈夫、小坂くん?」



少し涙目の小坂くんがやっと私に気づいたのか、弾かれたように顔を上げた。