「ねえ、やっぱり私、萩原さんのこと空って呼びたいな。空は空っぽの“空”だけじゃないじゃん。こんなに広く綺麗に続いていて私たちをいつも見守ってくれているんだよ?空がないと私たちは朝なのか夜なのかすらもわからないし、綺麗だなって感じることもない。私にとっての萩原さんが落ち着ける居場所なのと同じで、この空は誰かにとって必要な存在なの」



高城さんが立ち上がると、大きく腕を広げてにこっと優しく微笑んだ。



「それでもまだ、自分の名前が嫌いだって思う?」


「…ううん、少しだけ好きになったかも」



大好きで大切な友達にそう言ってもらった名前は、今初めて意味を持った気がした。


今すぐにはまだ難しいかもだけど、それでも好きになれる。そんな気がした。



「あ、やっばい!私、実行委員の子に頼まれて会議に出なきゃだった!急いで行ってくるね」



着信を知らせるようにして震えているスマホを手に、高城さんが慌てたように屋上を出て行こうとする。


だけどその寸前で私を振り返り、にっと満面の笑顔を浮かべた。