「…高城さんがせっかく名前呼びしてくれるって言ってたのに、拒絶しちゃった。私、自分の名前が大嫌いなの。(そら)の“空”は空っぽの“空”だから…。高城さんみたいに素敵な由来なんて何もない。こんな名前、大嫌い…っ」



小坂くんの横を逃げるように通り過ぎ、階段を下りていく。


拭っても拭っても止まってくれない涙に、胸が苦しいくらいに締め付けられた。



少し、調子に乗っていたのかもしれない。


つまらなかった毎日が高城さんのおかげで少しだけ楽しくなってきたから、私も柚みたいに変われるんじゃないかって思ってしまったんだ。


現実はそんなうまくいくはずがないのに。勘違いしてしまっていた。



こんな何の取り柄もなくて空っぽで、誰からも必要とされていない私なんて変われるはずがないんだ。この先もずっと…。