私の言葉を遮るようにして、着信音が教室に鳴り響いた。



「悪い、俺だ。ちょっと出てくる」


「あ、うん…!」



そのタイミングの悪さに密かにがっかりとする。



「もしもし、どうした?結愛」



教室を出ていく寸前で聞こえてきた彼女の名前に、思わずシャーペンを握っていた手に力がこもった。


小坂くんは一分もしないうちに戻ってくると、自席に置いていた鞄を肩にかけた。



「俺、もう帰るけどさっき何か言いかけた?」


「あ…いや、なんでもないよ…!またね」



小坂くんは少し訝しげにしながらも、「そうか」と教室を出て行った。