「あ、いたいた、萩原さーん。始業式に移動するから早く並べって先生が」


「あ、うん」



呼びに来てくれた高城さんに返事をして、落ちていたスマホをポケットに入れる。


クラスメイトの列には小坂くんの姿だけなかった。



「…ったく、あいつどこ行ったんだよ。まだ話は終わってねぇっつーのに」


「まだそんなこと言ってんの?その話はもういいでしょ。私は小坂くんに何もされてないし、そもそも山崎の彼女でもなんでもないんだから」


「いつかは莉央ちゃんと付き合うって決まってんのー!莉央ちゃんは俺の彼女になるのー!」


「いや、ならないし」



山崎くんにさっきの話をしようかふと思い出し、だけど寸前のところで口を閉ざす。


迷惑と言われてしまった手前、これ以上小坂くんのために何かをしない方がいい気がする…。


本当は教えてあげたかったけど、そんなことしたら次は偽善者とか言われてしまいそうだし。