小坂くんは落ちていた白のスマホを取り上げポケットにしまうと、私の横を通り過ぎ行ってしまった。


迷惑、か…。そうだよね、私が口挟むことじゃなかった。



…それでも、悲しかったんだ。


小坂くんは胸ぐらを掴まれても何も山崎くんに誤解だと伝えようとしていなかった。


それってつまり、伝えても意味がないと思ったから諦めたんだ。


何もしていないのに小坂くんは勝手な理由で嫉妬されて、濡れ衣を着せられて、それなのに違うと主張もしなくて、そんなのってあんまりだと思った。



傷つけられることになんとも思ってなさそうな小坂くんに、悲しくなってしまったんだ。



「…ん?」



ふと、つま先に何かが当たった気がして下を見ると、白のスマホが落ちていた。


どうやら階段から落ちた拍子に、私もスマホを落としていたみたいだ。