それが今書いたばかりの柚と日向に重なり、また涙が出てきそうになる。



「こ、小坂くんに彼女がいたなんて知らなかったよ。それもあんなに美人な…」



沈黙に耐えられなくなり、自ら今一番触れたくない話題に首を突っ込む。



「…別に聞かれてないし、言う必要もなかったから」


「まあ…そうだね」



再び訪れた沈黙に、どうしようかと必死に頭を働かせていると、小坂くんが小さく口を開いた。



「さっきは悪かったな。俺のせいでナンパされたようなものなのに、逆ギレして」


「え?いや、別に…」



まさか謝られるなんて思ってもなくて、間抜けな顔で目を丸くする。



「…俺と関わると、みんなを不幸にしてしまう。だから人とは関わりたくないんだ。母親を殺したって言っただろ?俺の母親は、俺を産んだ時に死んだんだ。そのせいで愛してた母さんを失った父親は精神病になって、今は病院に入院してる。俺が家をめちゃくちゃにしたんだ。俺のせいで、母さんは死んだ」