――――そうして、一か月半の時間が過ぎた。

「おはようございます」
「「おはようございます」」

いつも通り出社した栗花落は、自席に着くなり、不快感を示すお腹をさすった。
「うっ」
(なんだろう。気分が……)
今日は朝から、何故か体調が悪い。
栗花落は毎朝コーヒーを飲むのだが、今日はコーヒーの匂いを身体が受け付けず、飲むことができなかった。
だが、温度計で体温を測っても正常だ。
会社を休むほど体調が悪いかと言われると、微妙なところだった。

ただの疲れによるものだとも考えられるが、強いて言うならば。

(女の子の日、来てないんだよね……)

毎月、生理になった日には手帳に〇を書いている。
気になって手帳を確認してみたが、女の子の日が来ないまま、二カ月近い時が過ぎようとしているようだ。
となると、さすがに月経不順で片づけることはできない期間だと思う。

(検査キット、買おうかな……)

栗花落はその日、体調が悪いながらも仕事を終え、定時で帰路に着く。
最寄りの駅にあるドラッグストアで妊娠検査薬を探すと、それを一つ、緊張した手でレジまで持って行った。
会計を終え、栗花落は商品を鞄の中に入れると、いそいそと自宅に帰る。

「ただいまぁ」

声を掛けるも、返事はない。
どうやら、まだ翔は帰宅していないようだ。
(まぁ、そうだよね。翔が定時で帰宅することなんて、滅多にないもの……)

帰宅後、まずは手洗いとうがいをする。
それから妊娠検査薬を手にお手洗いに向かうと、パタンと扉を閉めた。

(初めてなんだよね……。これ使うの)

栗花落は検査薬を開封し、手順書の書かれた紙を開く。
そして、手順書の通りに検査薬を使用し、お手洗いを出た。

(ここに線が浮かび上がったら、妊娠……)

ドクン――――。