――――その夜。
会社での勤務を終え、栗花落は翔に連絡を取る。
今日は残業して夜遅くまで会社に残ってしまったが、そのおかげで翔と帰りが同じ時刻になった。
「一緒に帰ろう」
彼の言葉に頷き、栗花落は並んで歩き出す。
「ハイヤー、使わなくていいんですか?」
代表取締役社長となれば、ハイヤー通勤が当たり前だろう。
しかし、翔は首を横に振った。
「うーん……。たまにはいいだろ。今時、電車移動が危険ってわけでもないんだから」
「そうですよね」
こうして翔と一緒に居られるのは、素直に嬉しい。
仕事で関わることが少ない分、こういう時に顔を合わせて、会話をする機会が持ちたいのだ。
きっと、この先も仕事やプライベートが忙しくて、翔と毎日のように顔を合わせることはできないだろう。
けれど、たまにこうして帰路を一緒に歩くのは、大事な時間の一つになるに違いない。
「今日は、いろいろあって疲れただろう」
「あ、その件でお話があって」
「なんだ?」
今日、勝と彩絵の一件があって、それが無事に解決した。
驚いたのは、あの後、彩絵から謝罪があったことだ。
『ごめんなさい。……先輩』
彼女は、心の底から謝っているように見えた。
冷静になって、自分が勘違いしていたことに、もしかしたら気づいたのかもしれない。
『いいよ、もう。彩絵ちゃんこそ、幸せにね』
そんな言葉とともに、彩絵とは和解をした。
正直、彩絵のことを許せない気持ちは、今でもある。
だが、誰かを憎む時間よりも、今は翔との時間を大切にしたい。
後ろを振り返っている時間は、もうないのだ。
「彩絵ちゃんから、今回の件に関する謝罪がありました。なので、私はこの件について思い残すことは、もうありません」
「……そうか。それは良かった」
かと言って、彩絵と勝の異動は確実だ。
彼らに対する断罪は、これから始まる。
「寛大な処置をしてほしい、と言うわけではないんですけど。一応、仲直りできたってことを、翔さんにも伝えたくて」
会社での勤務を終え、栗花落は翔に連絡を取る。
今日は残業して夜遅くまで会社に残ってしまったが、そのおかげで翔と帰りが同じ時刻になった。
「一緒に帰ろう」
彼の言葉に頷き、栗花落は並んで歩き出す。
「ハイヤー、使わなくていいんですか?」
代表取締役社長となれば、ハイヤー通勤が当たり前だろう。
しかし、翔は首を横に振った。
「うーん……。たまにはいいだろ。今時、電車移動が危険ってわけでもないんだから」
「そうですよね」
こうして翔と一緒に居られるのは、素直に嬉しい。
仕事で関わることが少ない分、こういう時に顔を合わせて、会話をする機会が持ちたいのだ。
きっと、この先も仕事やプライベートが忙しくて、翔と毎日のように顔を合わせることはできないだろう。
けれど、たまにこうして帰路を一緒に歩くのは、大事な時間の一つになるに違いない。
「今日は、いろいろあって疲れただろう」
「あ、その件でお話があって」
「なんだ?」
今日、勝と彩絵の一件があって、それが無事に解決した。
驚いたのは、あの後、彩絵から謝罪があったことだ。
『ごめんなさい。……先輩』
彼女は、心の底から謝っているように見えた。
冷静になって、自分が勘違いしていたことに、もしかしたら気づいたのかもしれない。
『いいよ、もう。彩絵ちゃんこそ、幸せにね』
そんな言葉とともに、彩絵とは和解をした。
正直、彩絵のことを許せない気持ちは、今でもある。
だが、誰かを憎む時間よりも、今は翔との時間を大切にしたい。
後ろを振り返っている時間は、もうないのだ。
「彩絵ちゃんから、今回の件に関する謝罪がありました。なので、私はこの件について思い残すことは、もうありません」
「……そうか。それは良かった」
かと言って、彩絵と勝の異動は確実だ。
彼らに対する断罪は、これから始まる。
「寛大な処置をしてほしい、と言うわけではないんですけど。一応、仲直りできたってことを、翔さんにも伝えたくて」