そう口にして、翔は栗花落の顎を右手で持ち上げて、その唇を重ねる。
彼の柔らかい唇が、栗花落を欲するように動いた。

彼にキスをされると、心が満たされていく心地がする。
ずっとこうしていたい……そんな欲求が身体に充満し、会社に行くのも嫌だと思ってしまうほどだ。

翔はちゅっと音を立ててキスをし、唇を離す。
栗花落はその後、ごくんと唾を飲み込むと、改めて翔の顔を見た。

(ああ。なんて綺麗な顔……)

翔は、ずっと見ていても飽きのこない顔をしている。
好きだという感情も相まって、その姿はキラキラと輝いて見えてしまうほどだ。

翔は目を細めて栗花落を見つめると、そっと口角を持ち上げた。
そして、栗花落に言う。


「これが最初の朝だ。これからは何度も、栗花落と同じ朝を迎える」


翔はそう言葉にして、栗花落を上目遣いにじっと見つめた。

「――――そう、思っていいか?」

どことなく、そう口にした彼は緊張しているように見えた。

これから、幾度となく翔と身体を重ね、その愛を昇華させる。
それを改めて言葉にし、こうしておねだりされることが、今はひたすらに気持ちが良い。

「いいですよ。また、同じ朝を迎えましょう?」

栗花落がそれを肯定すると、翔は安堵したように笑ってみせた。

「良かった。その言葉が聞けただけで、今は満足だ」

翔は栗花落の頭にポンと手を置いて、小さく笑う。
そして、急いでシャツを着用し、背広に袖を通す。
その後、ワックスで髪を整え終わったら、彼は準備万端で声を掛けた。

「行こうか。栗花落」

栗花落もまた、支度を終えて答える。

「はいっ!」