ゴールデンウィークが明けた、5月のある日の朝。
「おはよう、星奈」
「おはよ、天音ちゃん」
私が登校するとしばらくして、天音ちゃんが教室にやって来た。
「ていうか、教室の扉のところ! 女子だらけで入るのに苦労したんだけど」
「あはは」
頬を膨らませる天音ちゃんに、私は苦笑い。
私たちのクラスには、陽向と水上くんという学年のモテ男子二人が揃っているからか、朝礼前や休み時間になると他のクラスの女子たちが彼らを見物しにやって来る。
2年生になって1ヶ月が経つけど、陽向たちの人気は全く衰える気配がない。
それどころか、先日の球技大会で陽向と水上くんの活躍によりチームが優勝したからか、彼らの人気にますます火がついたほどだ。
「一之瀬くん、おはよう!」
「……」
登校してきて席に着く陽向にクラスの女子が声をかけるも、陽向は無視。
陰で“氷の王子様”と呼ばれている陽向にとって、これはいつものこと。
陽向は学校では基本、女子とは話さない。
「もう、ヒナくん。女の子を無視したら、ダメじゃんか〜。ごめんね? 田中さん」
そして、そんな陽向を水上くんが注意するのもまた、いつものこと。