許嫁解消なんて、本当は嫌だけど。ワガママを言って、陽向を困らせるようなことだけはしたくない。


だから……。


「……わかった」


私は、そう答えるしかなかった。


「悪かったな。俺と許嫁だったせいで、星奈にはたくさん嫌な思いをさせてしまって」


ううん、そんなことない。陽向と許嫁で、嫌な思いをしたことなんて今まで一度もなかったよ。

むしろ私は、許嫁としてこれからもずっと陽向のそばにいたかった。


「……っう」


ああ、ダメだ。泣きそう。


陽向にだけは、泣いているところを見られたくなくて。


涙を堪えられなくなった私は、空き教室を飛び出した。