「あっ。ねぇ、あそこにいるのって一之瀬くんじゃない?」


天音ちゃんが指さすほうに目をやると。


中庭のほうで陽向が、女の子と向かい合って立っているのが見えた。


……あの子、私たちの学年で一番可愛いって言われてる子だ。


私は、学食へと向かう足が止まってしまう。


「あれはやっぱり、告白かな〜?」


ニヤニヤ顔の天音ちゃんが、後ろから私の肩にそっと手を置く。


「あの、あたし……一之瀬くんのことがずっと好きでした。良かったら、付き合ってください!」

「……無理。俺、誰とも付き合う気ないから」


告白に悩む素振りを一切見せることなくバッサリ振ると、陽向はスタスタと歩いていく。


「うわあ。相変わらずだね、氷の王子サマは」

「……だね」


天音ちゃんと話しながら、私は歩いていく陽向の背中を見つめる。


ハイスペック男子の陽向は、当然女の子にすごくモテるんだけど。


自分に告白してきた子を、いつも冷たくバッサリと振ることで有名。


氷のように冷たいから、学校では陰で“氷の王子様”と呼ばれている。