うっ。に、苦い……!


「ケホケホッ」


あまりの苦さに耐えられなくて、私はむせてしまった。


「おい星奈、大丈夫か!?」


陽向が、慌てて私の背中をさすってくれる。


「ごっ、ごめん。やっぱり今の私には、ブラックコーヒーはまだ早かったみたい」

「だったら、そんな無理して飲まなくて良いのに」


陽向が、涙目になる私にティッシュを渡してくれる。


「だって、陽向と同じものを飲みたくなったんだもん」

「俺と?」

「うん。なんか、陽向ばっかり大人で。私だけいつまでも子どもみたいだなって、ふと思ってしまって」

「別に、無理しなくて良いんじゃないの? 好みは人それぞれだし。星奈は星奈で、ゆっくりと大人になっていけば良いよ」


陽向に、頭を優しくぽんぽんとされる。


「星奈のコーヒー、ミルクと砂糖足すな」

「ありがとう」


少しして、陽向がミルク入りのコーヒーを私へと渡してくれる。


「美味しい」


いつもの飲み慣れた優しい味に、ホッとする。


「やっぱり、陽向が入れてくれたからかな?」

「……そんなの、誰が入れても一緒だろ」


ううん、違うよ。好きな人が自分のために用意してくれたのだと思うと、それだけで何倍も美味しくなるんだよ。