産婆からやっと入室許可がおり、司は誰よりも早く莉子の元へ駆け付ける。

「莉子…お疲れ様。大丈夫か?ありがとう…。」
そう伝え、布団に目を閉じて眠っているかのような莉子の頬をそっと撫ぜる。

するとぼんやり目を開けて、フワッと笑ってくれるから、司は不覚にも涙が出そうになり、ぎゅっと莉子の手を握り気持ちを制御する。

よく見れば髪は汗で、風呂上がりのように濡れそぼっている。

「よく…頑張ってくれた。」
司はそれだけの言葉を絞り出し、あとは感無量になって言葉を失ってしまう。

「司さんも…ずっと側にいてくれてありがとうこまざいました。」
莉子は司を見つめ終始微笑んでいる。

「お姉様、お疲れ様でした。とっても可愛い男の子。」
亜子もそっと声をかけ、姉を労い赤子を姉の手の中に戻す。

「赤ちゃんてこんなにも小さいのね…。」
莉子は我が子を見つめながら、幸せをかみしめていた。

その後、仕事を終えた正利も駆けつけ、しばらく賑やかに赤子を囲んで家族で幸せを分かち合った。