とりあえず自身の控室に莉子を招き入れ、震える莉子を抱きしめて落ち着かせる。

「怖い思いをさせて悪かった…。もう2度こんな事は起こらないようにするから許してくれ。」
自分の事のように謝って莉子に許しを乞う司は、先程の威厳のかけらも無い。

「大丈夫です…びっくりしただけで…助けて頂き、ありがとうございました。」
莉子は見上げ、司の額に流れる汗を指でそっと拭う。

司も同じタイミングで洗面所に足を運んでいたから助けられたに過ぎない。
もしも駆けつけられず助ける事が出来なかったらと思うと…今でもゾッと背筋が凍る。

「いつだって私が危機の時には、司さんが駆けつけて下さいますよね。…出会った時に…死神様だと思った事、許してくれますか?」

「シニガミ……。」
そう思われても仕方がない出会いだったと自覚はしている。それでも、ズキンと心が痛む。

「2度と莉子に手をあげる事などないと誓う。」
懺悔のように莉子の足元に跪き、そっと腰辺りを抱きしめる。

そして赤子に聞こえるかは分からないけれど、
「怖い思いをさせて申し訳なかった。」
とお腹の子にも謝る。

莉子がそんな司の頭をよしよしと優しく撫ぜて、
「司さんが謝る必要はないですよ。私の警戒心の無さが招いた事ですし、あなたのお陰で無敵ですから。」

「そうだな。君は無敵だ。」
この幸せを大切にしなければと司は改めて思う。