ブライアンが去った応接間に、亜子と2人正利は先程の話しをなんとか理解すべく頭をフル回転させる。

「亜子…これは大変な事になったぞ。あんな約束を交わして、本当にブライアンに嫁ぐ事になったらどうするんだ。」
そう言って怯える兄を気にも止めず亜子は、

「彼はああ見えて一途なんです。上手く転がしてお金を出して貰わなければ。」

既にブライアンを金ずるだと認定した亜子は楽しそうにそう言う。
したたかに逞しく生きる妹を見つめ、正利はハァーと深いため息を吐いた。

「しかし何故、司さんに貢がれるのは気が引けて、あの男だったらいいんだ?」
正利は素朴な疑問を投げかける。

「だって、司様はお姉様の旦那様でしょ。本来なら姉の為に注ぎ込むお金を、私が横取りしてるようで気分が悪かったんです。

だけど、ブライアンは誰のものでも無く、しかも働かなくても有り余る財産があるのだから、その一部を私の為に使ったところで、何の痛手もないでしょ。」

「いやいや…そんなに貢がせたら本当に最後、ブライアンに嫁がなければいけなくなるぞ。」
兄はそんな妹を咎めると、

「それも面白いかもしれません。」

亜子はサラッと言ってのけるから、正利ははぁーと天を見上げお手上げ状態だった。