この機を逃さず、暴言のことを謝ろうと思い切って口を開く。

「あの、宇賀地さん、この前の――」

「あー、専務! こんなところにいた!」

 結乃の言葉はこちらに駆け寄ってきたひとりの男性によって遮られた。言葉を飲んだまま結乃はその男性に目を奪われる。

(おお……これまたイケメンさんだ)

 細身のスーツに身を包んだその男性は耀と変わらないくらいのスラリとした長身で明るい栗色の髪。少したれ目気味の甘い顔つきが柔和な雰囲気を醸し出す、耀とは違ったタイプの美男子だ。

「もう、急にいなくならないでくださいよ……あれ、この方は?」

「ああ、彼女は山崎結乃さんだ」

 耀の言葉に彼は目を瞬かせた。

「えっ、山崎結乃さん? ってことは専務のことを石頭の頑固野郎って一刀両断したお見合い相手?」

「うぐっ……」

(石頭とも頑固とも言ってないし、一刀両断した覚えもないけれど……っ)

 そう捉えられていると知った結乃はダメージを受けて胸を押さえる。

(みなと)

 耀の低い声に湊はハッとして表情をそつのない笑顔に変える。

「はは、失礼しました。冗談ですよ」