今更取り返しがつかない。後悔先に立たず、覆水盆に返らず。自己嫌悪で死ねる。
 本当なら謝った方がいいのだが合わせる顔もない。

(で、でもちょっとだけ向こうだって言い方が失礼だったよね。あんな冷たく言わなくても)
 
 おあいこにするにはこちらの落ち度が大きすぎるが、そう思うことで心の平安を保つ。
 それにもう二度と彼と会うこともないだろう。うじうじ考えていても仕方がない。

(おばあちゃん、私これからもっとがんばって働いてお金稼ぐからね)

 もちろん祖母にはお見合いのことは話していない。あの日は友達と買い物に出かけたことになっている。
 とにかく甘い考えを捨てて、家の改修費用と祖母の生活のために地道にお金を貯めていこう。

 幸い勤め先は土日祝は必ず休みだからアルバイトを入れるのもありかもしれない。
 副業ができるか調べてみよう。結乃は頭の中を切り替えつつ繁華街を通過していたのだが、ついお気に入りの焼鳥屋の赤ちょうちんの前で無意識に足が止まってしまった。

(……お腹すいたな)