出会い、と聞いて一瞬心に影がさしたが慌てて思考を止める。

「……だったらいいんですけどねぇ」

「それより、駅まで送って行かないで大丈夫? この時間酔っ払いも多いでしょ。結乃ちゃん何度か酔っ払いに絡まれてるじゃない」

 千香子は心配気に言う、たしかに利用する駅周辺の繁華街は治安があまり良くなく、今まで結乃は帰りがけに酔った男性に声を掛けられることがあった。

「大丈夫ですよ。いつもスルーして素早く逃げてますから。童顔でちっこいからおちょくりやすいんですかねぇ」

 結乃が言うと、千香子は上着を羽織ろうとした手を止めてこちらを見てくる。

「うーん、たぶん違うと思うな。かわいい顔立ちなのに、スタイルがいいから変な奴に目をつけられやすいのかも……」
 あなたこそ送迎してくれるナイトが必要なのかもねぇと彼女は溜息混じりに言った。
 
 くれぐれも気を付けるようにと千香子に念を押されながら別れ、結乃は駅に向かった。
 ここからは繁華街を抜けて十分弱の道のりだ。

「素敵な出会いかぁ……」

(つい三日前に最悪な出会いはありました……)

 結乃は歩きながら極力考えないようにしていた宇賀地耀とのお見合いを思い出していた。