昔から家族ぐるみの付き合いで、今でも近所に住んでいるため女二人暮らしを気に掛け何かと様子を見に来てくれる。
 祖母が今日彼に連絡してみることになった。

 朝食を終え、食器を洗い身支度を整えた結乃は和室の隅にある小さな仏壇に手を合わせる。

「お父さんお母さん、おじいちゃん行ってきます」
 そして祖母にも声を掛けた結乃は、玄関を出て勤め先に向かった。
 
 結乃が勤めているのは最寄り駅から電車で五駅の場所にある化学繊維工業だ。
 その調達課で資材の購入や在庫管理などの仕事に就いている。

「おはようございます!」
 会社に到着した結乃は挨拶をしながら居室のドアを開ける。

「おはよう。結乃ちゃん今日も朝から元気があっていいわね」
 先輩たちの明るい挨拶が返って来る。

 もうすぐ創業五十年を迎えるこの会社は従業員二百人弱の中規模企業だ。アットホームな雰囲気で、調達課のメンバーは皆四十代以上だから皆入社二年目の結乃を娘のようにかわいがってくれている。

「はい、月末ですし、気合入れて頑張ります」
 月末はどうしても駆け込みで資材の発注が入ったり伝票の処理件数が増える。