「うん、大丈夫だよ」

 心配性の祖母を安心させるためにいつもこう言っているが、実の所お金がもったいないので一度も使ったことはない。

「それよりあそこの雨戸どうしよう。あのままにはしとけないよね」

 結乃はご飯に海苔の佃煮を乗せながら居間の掃き出し窓の方を見た。
 横開きのガラス窓に雨戸が三分の一ほど重なった状態のまま止まってしまっている。

 昨夜、祖母が雨戸を閉めようとしたら途中で引っかかってしまい、動かなくなってしまったのだ。
 結乃も動かそうとがんばってみたのだが、ビクとも動かなかった。

 きっと老朽化でガタつきが大きくなってしまったのだろう。

 結局開けることも閉めることもできずそのまま。朝なのに日差しが遮られて室内が薄暗い。
 道に面している場所だし、雨戸がしめられないのは防犯上も良くないだろう。

 これだけではなくこの古い家は他にもいろいろなところにガタがき始めている。

(きよし)くんに見て貰おうかしらねぇ」

 祖母が困ったように呟く。清くんとは亡き父の幼馴染のおじさんだ。