「おばあちゃん、おはよ」

 週が明け三日目の水曜日の朝、結乃はキッチンに立つ祖母に声を掛けた。

「おはよう結乃。ご飯もお味噌汁もよそったから食べようか」

 古い木製のダイニングテーブルの上に祖母が作ってくれた朝食が並ぶ。

「ありがとう」
 結乃は「いただきます」と手を合わせてから豆腐とわかめの入った味噌汁を手に取った。
 ホッとする味に顔がほころぶ。
 結乃の様子をニコニコと見守りながら祖母も向かいの椅子に座った。

 祖母の山崎澄子(すみこ)は現在七十八歳。元気に動き回っているように見えるが、祖父が亡くなってからはあまり外に出なくなり足腰が弱ってきている。
 それでも毎日こうして結乃のためにと朝食や夕飯を作ってくれるからありがたい。

「おばあちゃん、今日は月末で残業になるかもしれないから私に気にせず寝ててね」

「分かったけれど、無理しちゃダメよ。それにこの辺り夜は物騒だからおばあちゃん心配で」

 祖母は表情を曇らせる。自宅は最寄りの駅から徒歩約十五分。住宅街の端にあり夜はあまり人通りがないのだ。

「あまり遅くなったらタクシー使うから」

「だったらいいんだけどねぇ」