「だったらあなただって家柄越しにしか私を見ていませんよね。結婚って幸せになるためにするんでしょう? 幸せな家庭を築ける相手かどうか知るのがお見合いなんじゃないですか?」

「なにを……」

 言いかける耀に構わず続ける、一度口を開いたが最後、完全に頭に血が上っていた。

「私だってあなたとの結婚なんて御免です。そんな硬い頭だと、一生ロクな結婚できませんよ!」

 言い放った直後、結乃は我に返った。周囲がシンと静まり返り、目の前の見合い相手は整った双眸を見開いてこちらを凝視していた。

「……あ」

(……終わった。完全に)

 庭園に流れる清流の音を遠くに聞きながら結乃は、いっそこの場で気を失いたいと思った。