「結乃さん、よかったらいかがですか? 紅葉には少し早いかもしれませんが」

「はい」

 耀に促されふたりで庭に出ることになった。

「わぁ、きれいなお庭ですね」

 外の空気を吸って少しホッとした結乃は斜め前を歩く耀に声を掛けた。

 人の手によって完璧に整えられたこのホテルの庭園は溜息が出るほど美しい。きっとかなりの人件費をかけているんだろうなと下世話なことまで考えてしまう。

 奥の方には人工の滝があるらしいが、そこまでいくのだろうか。

「結乃さん」

 まだ色づいていない紅葉の木の下についたところで耀がゆっくりと振り返りこちらを見た。整い過ぎた顔で上から見下ろされると威圧感を感じる。

(さっきまでと雰囲気が違う?)

「……っ、はい」

「単刀直入に言う。申し訳ないがこのお話、そちらからお断りいただけないだろうか」

 低い声ではっきりと言われ、結乃はやっぱりそうなったかと心の中で肩を落とす。

「お断り……そう、ですか」

(宇賀地さんはまっとうな感覚の持ち主でしたか……って、あたりまえだよね)