彼は時折こちらに視線をよこすが、その表情は冷たさを感じない代わりに温かさも感じない。
 感情が読めないのがなんだか怖い。

「耀にこんなに若くてかわいらしいお嬢さんはもったいないくらいね」

「はい、本当に」

「い、いえそんなことは……」

「あらやだ結乃、恥ずかしかっているの? 伯母さんはお似合いだと思うわよ」

(ぜったいみんな心無いこと言ってる……)

 なんとしてもこの縁談をまとめたい伯母、耀の母も義父の意向なら上手くいったほうがいいと思っていて、耀は何を考えているかはわからない。

 それぞれが相手を探り、全てが上滑りしているような会話。
 でも一番たちが悪いのは金目当てでここに座っている自分だと思うと気がめいってくる。

(いや、うじうじ考えても仕方がない。ここにくることを決めたのは私なんだから。ほら、高級ホテル、美味しい食べもの、そして目の前に超絶イケメンのいる非日常のシチュエーションなんてそうそうあるもんじゃないし)

 いっそのこと状況を前向きに楽しんでしまおうと結乃は切り替えることにした。