「楓音ちゃん……! 見て、楓音ちゃんに食べてほしくてクッキー作ってきたんですの! ぜひとも受け取って!」

「わ、ありがとう美凪ちゃんっ。私、何にも用意してないや……」

「そんなの気にしないでくださいまし! 私がやりたくてやってるだけよっ? だからね、ほらっ。」

「ふふっ、じゃあ頂くね。」

「やったぁですの!」

 晴れている日の朝、教室に入ってきた真壁さんこと美凪ちゃんは、登校してきたかと思うと真っ先に私の元へやってきた。

 その手には可愛らしいパープルの包装をまとったチョコチップクッキーがあり、美凪ちゃんはそれを満面の笑みで渡してきた。

 私たちが危うく謎の男の人たちに連れ去られそうになったあの日から、私と美凪ちゃんは晴れてお友達に。

 その日以来学校にいる時はこうして一緒にいるし、毎日の学校生活がより楽しくなった。

 でも、美凪ちゃんと一緒にいるようになってから分かった事が二つある。一つは今みたいに、何かを渡したがりという事だ。

 サプライズ精神が旺盛なのか、度々私にお菓子を作ってきては渡してくれる。しかも、全部がとっても美味しい。