「ふぅ、終わった。」

 ほんのりオレンジがかり始めているグラウンドを見ながら、学級日誌を書き終えて手を止める。

 そして次は、深めのため息を吐き出した。

 はぁ……何でこんなにもやもやするんだろう。優心君がモテてるのなんて、今に始まった事じゃないのに。

 実はお昼休憩の後から正体不明のもやもやが私に乗っかっていて、普段よりも優心君のことを考えてしまっていた。

 もちろん、何かが変わる事なんてないんだけど……。

『わたしっ、成宮君のことが好きなんです……! 付き合ってくれませんか!』

 あの女の子、お人形さんみたいに可愛かった。

 ううん、彼女だけじゃない。この学校には可愛くて綺麗な子がたくさんいる。

 私はその中に紛れるモブで、目立てるはずもない。目立とうとする事すらおこがましい。

 なのに何で考えちゃうんだろうなぁ、はぁ……。

「のん、顔色悪そやけど……平気か?」

「わっ! って蒼空君かぁ、びっくりした……。」

「驚かせるつもりなんてなかったんやけどなぁ。そんくらい考え込んどったんか?」