「翠蓮って……あの、暴走族ですよね?」


「うん!そうなの暴走族なの俺ら……あ、もう着くよ」


胡桃のわざと怯えるような声に返事をした久石くん。

これは胡桃の作戦に乗ったほうがいいかな。

変なことに巻き込まれるのは本当にめんどくさい。


私より先に車を降りた和希さんは私に手を差し出してくれた。


「ありがとうございます。紳士ですね」


私は初めて和希さんに笑顔をつくった。

車の中ではずっと無表情でいたから。


「いえいえ。胡桃さんもどうぞ……透羽は自分で降りてね」


サッと手を引っ込めた和希さんを見て胡桃も初めて笑った。


着いたのは黒が基調なCLOSEという札がかかっている小さなお店。

当たりを見渡せば、回りはちょっとだけ薄暗くて不気味な雰囲気だった。

……ここどこよ、これはしばらく帰れなさそう。


「中に入ろうか、着いてきてね」


扉を開けて中を見ると明らかにBARのような空間が広がっていた。

壁には額に入った認定証みたいなものが飾ってあったりドライフラワーやグラスがかかっている。

額に入っている認定証らしきものを見て胡桃も私もここがどこにあるBARなのか特定した。