ちょっとだけおどけるのが下手で、髪を切ってくれた手も震えていたほど、不器用。

それ以上にとてもやさしくて綺麗なひと。



「…そうだとして、おまえは俺に何を望む?」



わからない。

なにかを望んだことは、この場所であなたを指名し、かつてのあなたが着ていた着物を欲しいと緋古那さんに言ったことが初めて。


また話したい。
また顔を見たい、あなたのことが知りたい。


それはれっきとした、望みだ。



「ここから……、一緒に、出たい…です」



馬鹿なことを、言った。

吉原をろくに知りもしない子供が、金もない子供が、馬鹿なことを言ってしまったんだ。



「…本気で言っているのか?それは莫大な金と引き換えに俺を買って解放するという……身請(みう)けということだぞ」


「は、はい…」



空気がズシリと鉛(なまり)でも撒かれたかのように重くなる。


悪いことを言ったつもりはなかった。

私は本当に、心からそう思ったから言ったのだ。


それがどれだけ、彼らにとって残酷だったことか。