「そっ、そういうこと…っ、してしまったの……!?どうしよう記憶ないのにっ、こんなのが初めてだなんて嫌っ、いやっ、違うんです嫌っていうのは水月さんのことを言っているわけではなくて……!!」


「未遂だ。騒ぐな」


「……み…すい…」



ほんとうに…?

吉原で未遂で朝を迎えることのほうが変わり者で、無礼な行いではないのだろうか。


しかも私はそんなものが2度目だ。



「そんなに信用ならないなら、自分で自分の身体を触って確かめればいい」



この距離でもうつくしすぎる顔立ちに、私が彼の前でそんなことできるはずもない。

ここは水月さんの言葉を信じることにして、じいっと必死に合わせた。



「本当になにも覚えていないんだな」


「………はい…」



この場所に自分の足で向かったことは覚えている。


緋古那さんの見世に入って、彼と一緒にひとときの時間を楽しんだ。

芸者たちの演奏や舞を見て、そうだ、お酒を初めて飲んだの。


そこからの記憶…………ありません。