『ねえ、じじ様。わたしのとと様とかか様のこと、おしえて?』


『…その話はまた今度じゃ』


『どうして?こんどっていつ?』


『ひめさ───…、ウルが大きくなったら、必ず知るときがくる』



じじ様はいつも、私の両親のことは教えてくれなかった。


いつか大きくなったら、そのときが来たら。

そんなことばかりを言って、最期は病気で死んでしまった。


結局なんにも知ることができなかったね。


じじ様が本当に私と血のつながった祖父という事実さえ、ハッキリできないまま。



「────………ん…」



また明烏の鳴き声だ。

浅草寺の鐘の音では目覚められなかったらしく、ふかふかとした温かな布団に私だけではないぬくもりを感じて目を覚ました。


………あけ、がらす…?


おかしい。

それは自宅で聞くことができるものではない。

明烏に起こされたのは過去に1度だけ。


1度だけの……はずが。