「確かにそれまでは男のふりして生きてきたってのは理解できる。けどさ、もうそんな必要ねえじゃん。…ほら、今はオレがいるんだしよ」


「そう、なんだけど…」


「まあー、変な野郎がつかないって意味ではオレも安心っちゃ安心だけど…。見てえなって思うんだよ、長い髪のウル」



照れたような苦笑いで誤魔化した。


私が短い髪を今でも貫いている本当の理由は、鷹にも話していない。

それは鷹と出会うよりも前の話だからだ。



「鷹は……昔から釣りとか、得意だったの?」


「…どーだっけ。昔のことなんか忘れちまった」


「…そっか」



家族の話とか、お互いに出会う前の話とか。

私たちにそんなものはいらない。


身寄りが誰もいないという結果論だけが残っている私たちに、家族がいた頃の過去など必要ないのだ。