男女の色事だって経験はないものの、淫らなことをするという浅い知識だけは持っている。
「お酒…、飲んでみたいかも…です」
「…ん。じゃあ、少しだけね」
その少しだけが、大失敗。
もう1杯、もう一口だけ、を繰り返した結果の後悔。
を感じているのは、きっと緋古那さんだ。
「きつねさんはどこにいるの?どうして来てくれないの?私、ずっとずっと待っていたんだよ」
「うん、うん、ちょっと水を飲もうかウル」
「いやっ!お酒とかいて水とよむっ」
「……なに言ってんだ、この子」
向かい合った膝の上。
これじゃあろくに演芸を楽しむこともできないなと、緋古那さんは振袖新造たちを退室させた。
とん、とん、とん。
先ほどからずっと、まるで幼子をあやすかのように背中を叩いてくれる。