「…俺と一緒にいるのに水月花魁殿の話ばかりだ」
「あっ、すっ、すみません…っ」
私がやるべきことは、この人に幸福を与えること。
それが交換条件。
というのに、私といえば彼の人の良さに甘えてペラペラと水月さんのことばかり。
これじゃあ緋古那さんにとっての幸福とは逆方向だ。
なにをしているの、ほんとうに。
「…ウルはお酒は飲める?」
「……飲んだこと、ないです」
「飲んでみたいとは?」
「…ちょっとだけ」
「え、本当かい?無理に飲ませるのは俺の主義ではないから、嫌なら嫌と言えばいいんだよ」
世間から見ても幼く見られがちだけれど、私はすでに元服している身。
子供ではないから、この花街にいるのだ。