そのたびに揺られる蝶を私は追いかけてしまうから、また緋古那さんは身体を寄せてきたりして。
「…もっと照れてくれてもいいんだよ?」
「て、照れてます…が。緋古那さんはそれ以上に落ち着くんです」
「……まあ、それはそれで嬉しいけれど」
色気より食い気、なのかもしれない。
見た目にも拘られた食事が、私に食べられることを望んでいるかのように膳に広げられている。
「水月さんは、よく吉原の外に行ったりしていたんですか…?」
「あー、そうだね。してたね。しょっちゅうだよ」
「そんなにも自由に出られるものなのですか…?」
「まさか。女郎もそうだけど、脱走者は仕置き部屋だったからね。…でも、彼にはそれほどまでに会いたい子がいたんだろう」
そこまで言って、緋古那さんは煙管を置いた。