水くさい、なんて思ってはだめ。

ここまで優しくしてくれたのだからそこも教えてくれたっていい、だなんて。


渡された着物をぎゅっと抱きしめるだけで涙があふれる。


会いたい。
この人に、会いたい。



「…そんな顔されると余計ダメだな」


「ひゃ…っ!」


「大丈夫、怖がる必要はない。俺に任せて」



帯がしゅるりとほどかれて、パサッとはだけ落ちた薄汚れた着物。

私のような女は自分で着替えられない女だとでも思われているのか。


「俺がそうしたいだけ」と、甘く掠れた声が静かな一室にこだました。


かたく目をつむったまま微かに震える自分の身体を抱きしめていると、それさえ包み込むように緊張がほどかれる。



「……きれいなカラダをしてる。まだ男を知らない、誰にも触れられたことのない躰(からだ)だ」



ごくりと、彼の喉仏が動いた。

すると緋古那さんは、私が目を覚ます前に歌っていた鼻歌を口ずさむ。