え?と、聞き返したときにはもう。

布団に倒されていた自分の身体。
覆い被さってくる緋古那さん。


不思議と怖さはなくて、彼はこれから何をしてくるんだろうと落ち着いて待ち構えてしまっていた。


それくらい、やさしい顔をしていたのだ。



「ひこな、さん」


「本来はね、こういう場所だなんだよ吉原は」



柔らかすぎる話し言葉だから、油断してしまうの。

それも緋古那さんが持つ女を手懐けるための得意分野だとも考えられたというのに。


きれいな顔を、している。


花魁に対立てる人間として、やはり彼が太夫というのは嘘ではないと分かる。



「こんなところに来てしまってどうしたの」


「…さみしかった、から」



また、その言い分。

使い回しではあるけれど、使い回しているつもりはない。