「いざよい…?」
「なかなか躊躇いながら出てくる…せせこましくて意地っ張りな月のことかな。まるで誰かさんにピッタシだ」
それは私に言っているんじゃないかとも、勝手に笑われた気分になった。
せせこましくて意地っ張り…。
昨夜、おもいきって聞いてしまえば良かったんだ。
あなたがキツネさんではないですか───?と。
初めて味わった甘さに酔いしれて特別な時間を使い果たすくらいなら。
「このお薬…、水月さんが持ってきてくれたんですか…?」
「あ、やっちまった。それ、ぜったい言うなって言われてたんだった」
「…え、」
「内緒、ないしょ。俺とウルの秘密」
とんとんと、人差し指で唇を叩いてくる。
こんなふうに平気で縄張りを越えてくるあたりが、彼らの特徴なのかもしれない。
された側は困惑してどうしたらいいのか分からなくなるというのに。