ゴーンゴーンと、鐘が鳴る。
これは浅草寺のものだろうか。
カア、カア、と、明烏(あけがらす)の鳴き声までも。
朝に聞こえる鳴き声はいつも小鳥だったはずが、今日は違う。
火鉢がそばにあるのか暖かく、布団も常日頃の薄さがない。
「フンフフフンフーン、んー、なんちゃらほいのーー、ほいよっと~」
おとぼけた唄が聞こえる。
心地よい音程ではあるが、口ずさまれる言葉には笑ってしまいそう。
そんな鼻歌を歌っているのは誰だろうかと、重いまぶたをゆっくり開いた。
「……ひこな…、さん……?」
格子の際。
外の風景をじっと見つめていた彼が、私の声に耳を傾けながら視線を移した。
「…具合はどうだい?」
「ぐあい…?」
「やっぱり覚えてないか。きみね、昨夜、裏口の先で倒れていたんだよ」
そういえば、水月さんのもとを離れてからの記憶が曖昧だ。
体調が優れないと言ったのは決して鷹を引き留める方便ではなく、本当だった。