「で、では…、あなた様を……」
「……………」
私が指名したのは緋古那さんではなかった。
最上級のうつくしさを持ち、たおやかな声をしたひと。
白粉を塗っているわけではない自然な白肌。
垂れ下がる耳飾り、ほどよく開いた胸元、懐に隠している左腕。
「さすがにね、さすがに例外ってあるから。水月花魁殿はだめだ、ウル。たとえ特例切手を持っていたとしても、そいつだけは───」
「わかった」
「え」
「ちょうど暇だった。茶屋くらいには通してやろう」
水月さんの言葉を聞いた瞬間、緋古那さんが私の腕をつかんで、パッと離した。
「だが───」
混乱した表情の緋古那さんを置いて、私の赤く染まった唇へと手を伸ばしてくる花魁。
「これは似合わないな」
「っ!」
ぐいっと、親指で拭われてしまった。
そして反応する間もなく背中がとんっと押される。