「それがね。特例切手を持っていたんだよ、この子」


「特例切手?…なぜ」


「なぜ?それは俺も知りたいところ」



下駄も持っていない自分が恥ずかしくなった。

草履ひとつでこんな場所に来て、場違いすぎた。


こんな女が選ばれるはずがないんだと改まっていると、緋古那さんは名前を呼んでくる。



「で、ウル。きみがこのまま俺を選ぶなら、せっかく来たことだし楽しませてあげよう」


「わ、私が選べるんですか…?」


「ふっ、当たり前じゃないか。女が男を買う場所だよ、ここは」



金で夢を買うことができる。
金で時間と愛を買うことができてしまう。


ひとときの……夢、時間、愛を。


特例切手を持っている私にだけ与えられた、今日だけの夢。

暗闇に生きていた私には2度と味わえることのないもの。