「俺、できれば仕事したくないんだよ。こんな最前の見世に並んでいれば、女は素通りだからね」



どこか人間らしさがある人だと思った。

こんな格好の女に笑いかけてしまったくらいの緋古那さんなのだから、たしかに彼自身も変わっていないとおかしい。



「でも、ちょっと興味が湧いた女の子がたまたま来てくれてしまったから」



移される視線。

高貴な雰囲気たちに消えかかっていた私が、無理やりにも戻される。



「…ここはおまえのような女が来ていい場所ではないぞ」



緋古那さんではない彼のぼやきは、まるで丸裸を見られているかのような羞恥心さえ襲ってくる。


それほど、すべてを暴いてしまう目。

鋭くもやさしく、儚げで、うつくしい。


顔でのし上がったと言われても納得できるが、やはり隠しきれはしない知性のようなものがふつふつとある。