「………これ…、使えますか…」
「そっ、それは……!!」
手に握っていた、1枚。
特別な人間から渡された招待券だ。
私には、これしか持っていない。
「な、なんと……、大変失礼いたしました…!我がご無礼をお許しくださいませ…!」
どうして私のような女が特例切手を持っているのかと、納得はできていないようだった。
しかし高貴な場所の礼儀としてか、私にあたまを下げることを優先してくる。
こんな紙切れ1枚で見られる価値が変わるだなんて。
私にとっては、これほどない侮辱だ。
「…いらっしゃい。初めて来たのかい?」
「は、はい…」
「可愛いね。もっと顔をよく見せて」
まず最初の1件目。
いちばん近くにあったというだけの、唯一暖簾が下げられていた宿屋の手前。
しかし見世内に構えていた男は想像を絶する以上の風貌。
手の動きに引き連られるように、ギリギリまで寄った。
しなやかながらもしっかりと骨ばんでいる、男のひとの手。