「それで、お届け物といいますのは?」
はっと、意識が戻る。
住む世界の違いに驚いている暇もなく、案内人は早く渡せ渡せと手を出してきた。
「…すみません…、お届け物じゃ…ないです」
「……嘘を言った、ということですね?」
突如、低くなった声。
そういう客は物珍しいものではないのか、女が怖がる方法を熟知した仕草だった。
「い、いえっ、そういうわけではなく…!」
「失礼ですが、お帰りくださいませ」
私の頭からつま先までをじっくりと拝見するまでもなく、断られる。
鷹に贈られた着物を纏うこともしないで、いつもどおり普段どおりの煤(すす)けた着物姿、短い髪をした私は。
見るからに貧乏人、ただ興味本位でやって来てしまった庶民。
とでも、思われたのだろう。