「あ…、えと……裏吉原、に」


「お届け物か何かで?」


「は、はい…」



と、つい言ってしまった。


「左様ですか」と、どこか安心したように私の前を歩く男。


吉原遊郭へと入るための大門の、すぐ隣。

くぐり戸から入った長くつづく細道の先に、もうひとつの大きな門はあった。



「ここ……が…」


「はい。裏吉原にございます」



歩いているのは質の良さそうな着物と個性あらわす簪をつけた女ばかり。


先ほどの道とは正反対だ。

まるで女の夜だというように、若い女から年増な女まで様々。



「…すごい……」



吉原のような張り出し見世はなく、ひとつの宿場に男ひとりと付き添いの老婆が居座り、前を通る女たちが見つめるといった方式だった。


そこで条件一致をすれば、一夜を共にできると。


上げられた暖簾(のれん)の先に座る男たちは、あざやかな着物をわざと着崩したり目尻に色を付けたり。

それぞれが持った美貌という武器を最大にまで引き立てていた。