「……どうしてそう思うの…?」


「“いつも見ているボクが言うんだから間違いないさ。だから元気を出して?”」


「でも生徒たちはみんな……先生の顔に釣られて来てるようにしか見えないよ…?」


「“そうかもしれないけれど、先生はウルちゃんのことしか見ていないよ”」


「………そんなものはどうとだって言え───ひゃっ!」



ガバッと、うしろから回った腕。

抱き寄せられた耳元に彼の幸せそうな笑い声が広がった。



「あーもう、可愛いなあ」


「……からかわないでください」


「からかってないよ。俺が言うんだから間違いないさ」


「…生徒の……皆さんは…」


「とっくに帰った。俺がね、奥さんと仲良くしたいって言って今日は早めに切り上げたんだ」



よく言う……。

町娘たちが私にどんな認識をしているか、知らないでしょう。


どうにも彼女たちは私のことを、あなたが雇っているだけの女中だと思っているらしい噂を少し前に聞いちゃったの。


けれど“奥さん”と、まだまだ慣れない呼び方にポッと全身の熱が上昇した。