「おはよう、鷹」
いつものように起きて、いつものように朝餉を作る。
いつものように挨拶をして、いつものように一緒に食べた。
「あの着物…、今日返してくるね」
「……意味ねーよ。そんなのしたって」
「…意味、ないって…?」
鷹の目が、私が知っているものではなくなっていた。
「あのおっさん、死んだらしい」
「…え…?」
「…辻斬りに遭ったって聞いた」
たまに聞くけれど、それが該当される人間は死んだところで周りに気づかれない人間だけだ。
庶民や農民が無差別に斬られてしまう事件を辻斬りだと、私の見解ではそうだった。
だから、あんなにも町人たちに顔が知られている呉服屋の主人が理不尽に殺されるだなんて。
─────殺してしまったんだね。
あのとき、私があなたから渡された着物を素直に受け取れなかったのは。
鷹から微かに血の匂いがしていたからだよ。